地下鉄の女神さま 前編
憲宗の映画デビューはたしか「モンスターホテル」だったかな?
予告編も何も知らずに見たけれど、面白くて感動で大満足だった。
学校が振替休日で、平日なら混雑の心配はないからと6年生の長女、3年生の次女と4人で映画館に出かけたのだった。
街に慣れてない私。
「街」って言う時点で、もう慣れてない。
しかも、憲宗が迷子になる確率も高いのだから、準備には念を入れなきゃ。
出発前には友人に電話。
「地下鉄降りたら、どっち?右?左? エレベーターは?」
と、どうしようもない質問に、丁寧に答えてくれた友人。
地下鉄を降りてから、映画館への道順をイメージトレーニングをしてから自宅を出た。
映画デビューが成功したからと、調子にのって再びトライしたのだ。
よせば良いのに、2回目は次女と3人で。
頼りの長女がいないのに行ってしまったところにも落ち度がある。
映画にはポップコーンとジュースは付き物。
なーんて、教えてもいないのに、それが当たり前だと主張する憲宗。
大きなポップコーンを購入し、映画を楽しんだ。
はず。。。
この時、何を見たのかも覚えてない。
このポップコーンが、私を苦しめることになった。
悲劇が起きたのは帰りの地下鉄。
働く車や機関車が大好きな憲宗は、地下鉄だって大好き。
車両が到着すると、ホームに這いつくばって車輪や接続部分を見る。
ほふく前進でホームの際を進むのだから危険極まりない。
時に、先頭車両の前で落ちそうになりながら覗くのだ。
もちろん制止する私。
もちろん言うこと聞かない憲宗。
ピピィーーーーーーーーー!!!!
駅員さんに何度も笛を吹かれる。
当たり前だよ。
公共交通機関のマナーを教えたい私。。でも、まだ早かったかな。。でも、乗用車ばかり乗っていたらいつまでたってもマナーは見に付かない。。なんて思いながら、早く私たちの乗る地下鉄よ来てくれーーーーと、心で叫ぶ。
抗がん剤治療の影響で、私の体力はまだまだ十分に戻っていないのだ。憲宗を追いかけ、捕まえ、もうクッタクタになっていた。