⑧ まさかのリンパ転移
術後は順調に回復していた。
明日は退院って時に病室にやってきたT先生。
「組織検査の結果が出たから、ご主人呼んでくれる?」
私 「えっ?先生、私一人じゃだめ?」
今までだって、術前の説明も、手術の時だって私一人だったのに。
T 「ご主人と、ご一緒に。」
強い声。初めて見た鋭い目。そして、続けて
T 「何時でも構わないから。」
と、あれこれ聞かずとも私の家庭の事情は全て理解してくれてるその顔を見たら、駄々をこねずに「連絡してみる。。。」と言うしかなかった。
この時点で、良くない展開なんだろうとは察していた。
そうして、夜の8時。
カンファレンスルームに呼ばれ、T先生と父ちゃんは向き合い、私は横のソファに腰かけていた。
「残念ながら。。。」
と、切り出したT先生。
「リンパに転移していました。」
大きな声が響く。
「武田さん、若いから抗がん剤治療は絶対ね。」
えっ?って感じだった。2人とも。
でも、それはT先生もそうだったのかも知れない。
消化器内科のМ先生も、目の前のT先生も「このケースでがんが体に残っているのは見たことがない。」と、手術の前には同じ見解を示していたのだ。
T 「宝くじに当たるよりもはるかに低い確率だったんだけどね。ボクも驚きました。」
どうりで、入院前日に私が買ったサマージャンボはあたらぬ訳だ。こっちで当たっちゃったんだもの。
ステージはⅢーa。
リンパから血液に乗って、がん細胞は私の体内を巡っている。
執刀した敏腕外科医のT先生はがん専門医。このまま私の主治医となる。