ちゃんと今を生きてるかい?

耳が聞こえず言葉を持たない息子が教えてくれたこと。「未知数なぼくたち」絵会話アーティスト武田憲宗の活動や家族の日常を記録。金髪で、がんサバイバーの母ちゃんは気合を入れて子育て中。

特別支援学校 ① 入学式

憲宗の入学先が決まるまでは、色~んな事があった。

教育委員会の事務的なやり取りにイラつく日々。
私は最後の抗がん剤治療直後で体は思うように動かず。。日程調整に配慮して頂き、見学に行った特別支援学校の環境は、憲宗を成長させるにはとても良いと、夫婦一致で決めたのだった。
地域の小学校に通う長女と次女は残念がっていたが、当時の憲宗では特別支援学級はハードルが高いと感じていた。

 

バタバタと迎えた入学式当日。

数日前にバリカンで前髪を切ってしまったため、残念な丸坊主姿は、ビルマの竪琴。肩に鳥でも乗せてやろうかと思うほど貧相(涙)

私が着ている春物の服は、前がリボンで5か所ほど止められている。

リボンは蝶結び。

引っ張るとほどけるのを知ってか知らずか、憲宗が引っ張る。

慌てて結び直すと、次のリボンも解かれる。。。

ここから始まる攻防戦!!

憲宗が紐を引っ張るよりも早く結び直し、防御する。

ニヤニヤしながらしつこい憲宗!!

膝から降ろすと、どこかに走って行ってしまう。仕方なく膝に乗せる。

繰り返す攻防戦。

服がはだけると、キャミソール1枚の哀れな姿。

壇蜜でもない、私のそんな姿を見たい人は誰もいないだろう。全力で防御していた。

その時の写真には、私の後方で笑っているコーディネーターМ先生。。。見てたのね。

 

無事に式を終え、教室へと移動。

中に入ると、イスに座ってる憲宗の姿!!!!

いや「イスの上にしゃがんで座っている」が正しい表現だ。

ソファーやイスに静かに座っているとこなんか見たことない!!

「座らせる」ってことが、本当に大変だった。

いつも高い所にいる子どもだったから、家ではソファーを立てて、その上でテレビを見たりおやつを食べて過ごしていた。

外では車の屋根に登る。フェンスに登る。スーパーの陳列棚に登る。

その憲宗がイスに座ってるだなんてーーーーーーー!!!

感激ーーーーー!!

 

とは言えその姿、膝をかかえてお尻を浮かし、まるで猿。

きちんと両足を揃えて「手はお膝」ではない。

それでも、これはこれですごいこと!

小学生になるのが待ち遠しかった。

「憲宗だから」

という配慮がなければ、なかなか困難な保育園、幼稚園生活だった。そんな現状を目にしていても、私は早く「学校」という環境の中に身を置かせたかった。

小学生になるのが待ち遠しかった。

その時、憲宗は変わる。と確信していた。 

 

やっぱり、やれば出来るんだ。

「やらなくても良い環境を選んできたでしょ?」

うーん。

主治医の言葉が重いっ。

 

でも、できたのかね(笑)?

自分の命を守れるように、自由に遊べる森の幼稚園に通った。

社会性を学ばせるために、公立の幼稚園に通った。

引っ越しするでもないのに幼稚園を変えることは精神的にきつかった。
それでも、心と頭、感情と思考を切り離すという大切なことを体験出来た。これを導いてくれたのも、主治医だった。

ホント、よく見てる。 

 

目の前の憲宗は、イスの上にしゃがんで座っている。

いつも裸足だったのに、上靴をはいてる姿は石田純一。立派!!

靴下なんて、問題じゃない。

そして、飽きると誰かに電話。

上靴を脱いで耳に当て、真顔でなにやら声を出している。

何の打ち合わせだ!?

「憲くん!授業中に携帯電話はダメですよ~」

と、担任のK先生(笑)

 

ここなら大丈夫。

そう確信できた一言だった。